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ふ、と目を開けた。
「あ、本当に起きた」
目の前には見慣れたぼろぼろの天井。そして視界の端にはこれまた見慣れたぼさぼさの金髪。
「忍野・・・? ああ、寝ちゃったのか、僕」
いつもの机の上に腰掛けて話し込むうちに、眠り込んでしまっていたらしい。ここの所夜更かしが続いていた為だろう。
体を起こして、まだ少しぼんやりした頭で周りを見回すと、辺りはすっかり暗くなっていた。
――やばい、今何時だ。
今日は二人にドーナツを差し入れたらすぐに帰るつもりで、火憐ちゃんと月火ちゃんにも遅くならないって言って――
「偶然かなあ。でもよく寝てたし」
焦って時計を確認する間、隣に座る忍野が何かブツブツ言っているので、不審に思って覗き込んで見る。と。
「阿良々木くんはベタだからなー」
何か、失礼なコメントと共に、ふいと顔を逸らされた。
「・・・何だよ、ベタって」
「いや別に。独り言だから絡んでこなくていいよ」
即答か。可愛くねえ。
「だったら聞こえるように言うんじゃ・・・あれ?」
何か、口の中が甘い。
唇に触れてみると、白い粒が指についてきた。
「? これ・・・」
「それの何がおかしいんだい阿良々木くん、今日はドーナツを差し入れてくれたじゃないか」
「ああそうか。って、いや、僕は夕飯入らなくなるから、食べてないけど」
「うるさいなあ、そんな説明台詞を呟いてる暇があったらさっさと帰れよ。妹ちゃん達にまた怒られるぜ」
顔を逸らしたまま、やけにぶっきらぼうにのたまう声。
何だこいつ、今日は・・・というか、今、急に僕の扱いが荒くなってないか。
「言われなくても帰るよ。何で機嫌悪いのか知らないけど、忍のドーナツ取るなよな」
些か気分を害した僕は、負けじとぶっきらぼうに言い放って荷物を掴み、教室のドアに向かった。
立て付けの悪いドアを開いた所で、
「・・・ん?」
ばっ、と振り返った。
忍野は、机に腰掛けて、未だ僕を見ようとしない。
傍らには、蓋の開いたドーナツ屋の箱。
中は見えないけれど、近くに紙ナプキンが広げられており、多分、食べかけの・・・
「・・・」
僕は無言で向き直り、外に出て、静かに静かに、ドアを閉めた。
そして、一つ息をついてから、――暗い廊下をまっしぐらに階段へ走った。
いやいやいやいや、無い無い無い無い!
そんなベタな展開、僕とあいつの間にあってたまるものか!
舌先に残る砂糖の味。ああくそ顔から火が出そうだ。
階段で何度か躓きながらも、僕はただひたすらに廃墟の外を目指し、その思考から逃れようと足掻くのだった。
*
「あー、転ばなきゃいいけど」
時折何かにぶつかりながら遠ざかる足音に、僕は溜息を吐いた。
はじめは普通に起こしてあげようと思ったのだけど、あんまり平和に眠っていたものだから。
出来心でやった。今は反省している。って所か。
口の端に付いた食べかすを指で拭って舐めてみれば、
「・・・甘」
あの子の唇と、同じ味がした。
ひいいい恥ずかしいいいいいい。
あと、舌を入れたらもう、おめざの意味から外れると思います!
というか、起きたのは舌を入れry
でもね、きっと、我に返って体勢を戻して、くらいのタイミングでry
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