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小ネタ、感想、語り等置き場。現在は化物語(腐気味)中心です。☆『終物語(下)』までネタバレ有りです☆
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「――ん」

目を開けると、暗闇の中、忍野の右手が目に入った。
正確には、僕の頭の下から伸びた腕の先にある、右手。

終わった後で気絶するように眠ってしまうと、よくこんな体勢で目覚める事になる。
横たわった僕の肩には制服の上着がかけられ、それを更に包むように忍野の左手が回されていて、まるで人形かぬいぐるみにでもなった気分だ。
微かな煙草の匂いに安心する。いつの間にか――そうなるように、なっていた。

ただ、

「阿良々木くん、起きたのかい」
と、頭の後ろから低い声で呼びかけられた。
僕の髪に鼻先を埋めるようにしているから、息がかかってくすぐったい。
ん、と応えたら、目の前の右手が動いて、頭を抱え込まれた。
ちゅ、と後頭部に触れる感触があり、阿良々木くんは体力無いよねー、と失礼な事を言われた。
「う、るさいぞ」
ふるっと頭を振って、身を縮めるようにして少しでも離れようとするが、腰に回された左手がそれを許さない。
背後でくすくすと忍び笑う気配が腹立たしい。

「・・・僕のせいじゃないだろうが」
か弱い女の子じゃあるまいし、いった後で気を失うなんて事は不名誉この上無いけれど、そもそも達する回数が違うのだから、最終的に僕の方が体力の消耗が激しいのは当たり前なのだ。
人を散々いいようにしておいて・・・いや、もしかしてあれは気遣いの一種なのかもしれないけれど・・・それにだって、限度というものがだな、
「いくとこ見るの好きだから」
「心を読むな!」
思わず勢い良く突っ込むと、今度は右手がさらりと髪を梳いてくる。いい子いい子とあしらうように。

悔しいけれど、不快じゃない。いや、多分、嬉しい。こんな風に、じゃれ合うのは。

ただ、

「忍野」
「んー?」
飽きずに僕の髪を弄くっている指に構わずに、その腕の中で強引に寝返りを打った。
「おっと・・・何だい、阿良々木くん」
少し驚いた顔を見上げて、
「何で、いっつも後ろ向きなんだよ」
は? という顔の忍野を、ちょっと睨む。

「――どうせ抱き枕にするなら、こっち向きに使え」

向き合う方がいいって、いつも言ってるだろ。
それだけ言って、目の前の体に腕を回して抱きついた。

一瞬間を置いて、小さく笑う気配と、強く抱き締め返す腕。
「そうだね、悪かった」
耳元に囁かれる声には、苦笑いが混じっていた。


(この恋にはあらゆる場所に、寂しさが潜んでいる)





無意識に後ろ向きに抱きかかえちゃう忍野さん。
タイトルの99は、体勢の事です。

何でか物凄く時間かかっちゃった。何でだ。
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