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小ネタ、感想、語り等置き場。現在は化物語(腐気味)中心です。☆『終物語(下)』までネタバレ有りです☆
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「おや、どうしたんだい阿良々木くん」
「こんな時間に。眠れぬのか? お前様」

ぼんやりした灯りに浮かび上がるカウンターは、昼間とはまるで違う表情を見せる。
騒がしい昼の海に似つかわしい雑多な小道具たちは暗がりに身を隠し、代わりに高価そうな酒瓶とグラスが二組並ぶ。その光景は、昼間ここで立ち働く僕が驚くほど様になっていた。

絵になっているのは、舞台装置だけではない。
いや、むしろ、空間そのものが妖しく揺れているような気がするのは、そこに居る一人の女性のせいなのかもしれなかった。

「どうしたのじゃ?」

人工では絶対にあり得ないだろう、眩しいほど鮮やかなのにけぶるように柔らかい金髪、そしてそれに縁取られた寒気のするような美貌に、僕は決して見慣れるという事が無い。
毎日、日没と共に現れる、成人した忍の姿だった。

リゾートらしいゆったりとしたシルエットのドレスに、すらりとした(一部自己主張の激しい)スタイルの身体を包み、スツールに浅く腰掛ける彼女は、ただそれだけでモデルか女優さんみたいで――その奥で気楽そうに笑う忍野までひっくるめて、何だか、都会のバーにでも間違って入ってしまったかのような(よく知らないけど)戸惑いを覚えてしまう。

「ああ、いや、トイレに来ただけ。そしたら灯りが漏れてたからさ」
明日の仕込みでもしてるなら、手伝おうかと、思って。
ぼそぼそと告げると、そりゃ悪かったねー、と忍野が笑った。

忍野も今はカウンターのこちら側、その手に琥珀色の液体とロックアイスが入ったグラスをぶら下げて、忍の隣に腰掛けている。
ウイスキーか何かだろうか、ビールを程々に呑む所しか見たことは無かったが、こうして見ると、如何にも強そうだ。

「――ならこちらへ。お前様もそろそろ酒の味くらい覚えんとのう」
「こらこら忍ちゃん、阿良々木くんはまだ未成年だよ?」
「固い事を言うでない、小僧。なに、我があるじ様は、カラダのほうはもう立派に大人じゃろう?」
「いかがわしいなあ、その言い方」
「それに、あるじゃろう、ほれ、まるで水のような・・・びーる、とか言ったか。あの無粋な飲み物なら、さして強くも無し――全く、あのようなもの、暑かった一日の終りにぎんぎんに冷やしたのを一気に喉に流し込み、『っかー! この一杯の為に生きておるのう!』と、定められし呪文を唱えるときくらいにしか、存在意義を見出せんわ」
「うん・・・貴族の血統の伝説の吸血鬼を、ここまで親しみやすいキャラにしてしまった事に、僕は今軽く責任を感じているよ・・・」

カウンターに背を預けるようにして座りお気楽な会話を交わす二人は、何だかとても――。

「いつまでそんな所に突っ立っておるのじゃ。はよう来んか。仕方ないから今この丁稚にミルクでも用意させるぞ」
「丁稚なんだー。ていうかちょっと酔ってるよね忍ちゃんは」
「おぬしは全く変わらんのう、つまらんわい」

何だかとても、絵になるなあ。
(いや、会話はこんなだけど)

「――いや、いいよ、用事が無ければいいんだ。もう寝るから。おやすみ」
引き止められる前にさっと踵を返した。

暗い廊下を自室へ急ぎながら、僕は一言だけ。

いいなあ。

と、呟いた。



* * *



「どうしたんだろ、阿良々木くん」
「気後れしておったんじゃろ」
「何で? まあ、酒は出てるけど」
「いや、どちらかといえば、釣り合いがとれぬ――とでも思ったか。全く、可愛らしいあるじ様じゃ」

くすりと笑う忍に、忍野は、ふむ、と一瞬間を置いてから微妙な顔になった。

「釣り合いね・・・それって、僕と忍ちゃん、どっちと?」
「おや。・・・おぬしも少しは酔っておるのか?」







海の家、折角ちょっとパラレル(ちょっと・・・?)なのだし、忍(大)も出てきて欲しい。そんなスタートで。
子供組が休んだ後で、お酒呑んでる大人たち。たまにドラマツルギーさんとかも加わる(最近日本酒にはまった)。
貝木は一人呑み派。ギロさんは呑みません。
エピは呑めるんだけど、最近、暦に付き合ってあんまり呑まない。呑む時は何でもいいのかな。酔えりゃいいみたいな。

忍はワイン(当然、赤)呑んでます。何か凄く高い奴。
あの二人が揃ってカウンターに居たら、とても絵になると思うんですよね。
暦はそんな二人を見て、ちょっと気後れというか、遠慮しちゃった感じで。忍野と忍、どっちも羨ましいのではないかと。
というか、何に対して「いいなー」なのかはっきりとは分かっていないのかしら。ちょっと疎外感。


それにつけても、最近、色んな大好きサイト様で忍野と忍と暦の微妙な関係性を描いた作品を拝見出来て、とっても幸せです。
ああっ、そう来ますか!(ドキューン)(撃ち抜かれる音☆)(うざい)
難しいんだけど、面白い、この三人。

三人でプラトニックに愛し合うのも、非・プラトニックに愛し合うのもいい。
見た目が、大人(忍野)―少年(暦)―子供(忍)、中身が、大人(忍)―若造(忍野)―子供(暦)ってなるのも、いい。
忍が優しすぎたから、忍野がお人好しすぎたから、暦が愚かすぎたから。
偶然が出会って重なった運命だけど、本筋にはなれないし、ずっと一緒にも居られない。不思議なトライアングルだなあ。

あ、サブタイトルは、『後悔は大人の領域』をもじってみました。
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