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小ネタ、感想、語り等置き場。現在は化物語(腐気味)中心です。☆『終物語(下)』までネタバレ有りです☆
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月の出ない夜、廃墟は限りなく真の暗闇に近くなる。
雨こそ降っていないが、空は分厚い雲に覆われて、遠くで時折低く鳴る雷鳴があった。

闇に沈む室内へ届くのは、建物近くの道路を縁取る街灯と、遠くの家並みから零れる灯りの、微かな光のみ。それも、深夜となれば数は限られている。
殆ど手探りで階段を上った少年は、辿り着いた軋むドアを押した。

「――やあ阿良々木くん、待ってたよ」

窓辺に腰掛けている為に辛うじて輪郭の読み取れる男が、当たり前のように出迎えた。

「ここまで来るのは大変だったろう、今時分の君には暗闇を見通す視力なんて無いから」
「ああ。でも、ここの造りはもう頭に入っているから」
まるで待ち合わせでもしていたかのように、何の確認もせず、何でも無いやり取りを交わしながら、暦は忍野へと歩み寄った。

「で? 今日はどうしたんだい。見たところ、差し入れに来てくれたわけでも、女の子を見せびらかしに来たわけでも無いようだけど」
目の前まで来た暦の指を取って弄びながら、忍野が問う。

「別に、用事なんか無いよ」
されるがままに自分の手を長い指に預けて、暦は幾分素っ気無く応えた。
触れ合うほど近くに居る為に、仄かな灯りのみでも互いの表情が見える。

忍野は暦の指を口元まで持って行き、それに唇を触れるようにして、
「何だいそりゃ。僕だってそう暇じゃないんだよ」
「常に暇そうに見えるんだが・・・」
見上げる先の幼さを残す顔立ちが、今夜はやけに大人びて映った。

そりゃあね。
僕は急用に煩わされるのが嫌いだからさ――と、軽く笑う顔は、まるでいつも通り。

それでも。
視線がかち合った瞬間、

「君が来るのをいつでも待ってるんだよ」

二人は同時に顔を寄せて、唇を重ね合った。

「・・・ふ・・・」
繋いだ指はそのまま、空いている方で忍野は暦の腰を引き寄せ、暦はその肩に手をかけて。
忍野が拙い暦を優しく翻弄するようにゆっくり味わえば、少し苦しげな声が喉の奥から漏れた。

「――忍野」
「んー?」
「男同士ってどうやるのか、知らない」
「僕も知識だけだなあ・・・」

まあとりあえず、Aの次はBだねー。
ふざけた口調で言いながら、忍野はするりと暦のパーカーの下に手を滑らせ、撫で上げるようにして裾を上げていく。その間にも、幾度か顔を返しながら、キスは止めない。

「おし、の」
ふるっと震えた暦が、掠れた声で呼びかけた。
「何だい」
途中で嫌になっても、もう帰してあげないよ。
「じゃなくて」
「うん?」
後で、告っていい?
「駄目」

僕はね、先手を取られるのも嫌いなんだよ。
間近にある、意外と真面目な表情に暦は笑って、
「じゃあ早くしろよ、そんで、早く好きって言え」
首筋に悪戯を仕掛ける忍野の頭を抱き締めた。





そんな初めて妄想。
言葉が達者な二人には、言葉はかえって邪魔みたい。

はい、書いた人完全に真夜中テンションですー。
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それは本当に、とても勝率の低い賭けだったのだ。

*

季節は春。
日差しの麗らかな昼下がり、満開の桜が散る先を目で追っていたら、周りの風景に見覚えがあることに気が付いた。
いつの間にか、あの街の近くを通っていたらしい。

数年前、伝説の吸血鬼が舞い降りた街、何の変哲も無い貌をしながら幾つもの怪異を抱え込んでいた街。
そして、あの子が住んでいる街。
次の目的地へと向かう道を少し逸れれば、あの街へはすぐに到達出来る。そういう道に、僕は立っていた。

と、目の前にひらひらと舞い落ちるものがあった。桜の花弁だ。
思うよりもぼんやりしていたらしい。

――ああ、この辺は今頃が盛りだからな。
ほら、あそこの道沿いに植えてあるから、風が強いとここまで――

綺麗な黒髪に花弁を乗っけて、穏やかな目をして教えてくれた。
その声を。
声を、思い出したので、少し馬鹿をしてみようと思ったのだ。


人気の無い道をぶらぶらと歩けば、程無く覚えのある街並みに入っていた。
「この道はいつか来た道――ってね」
歌の歌詞のような風情のある状況じゃなかったけれど。少し笑いそうになる。

始まりは吸血鬼。
金色の、血も凍るほど美しい彼女。
傲慢で無邪気な残酷と、悲しみと誠実と優しさ。
それから、3人の手練のハンター。
一翼を欠いた二人はそれでも変わらず仕事に勤しんでいる事だろう。

そして、

「・・・何だろう。馬鹿な子供、かなあ」
本人が聞いたら間違いなく髪を逆立てて怒りそうな評価だが、これが正直な所。
本当に、救いようも無く馬鹿で、お人好しで、どこまでも優しい、いい子だった。
その愚直さや鈍感さに、時に苛立ち、時に惹かれ――惹かれ、合いながら、数ヶ月を過ごした。

  いかないで

あの子は一度も口に出す事は無かったが、何時しかその瞳が雄弁に語るようになっていた。
不意に裾を引かれた日。振り向いた先の泣き出しそうな顔。
胸に抱き着いて離れようとしなかった夜。その震える指。
そんな一つ一つに胸を刺されながら、僕は何時しか離れる日の事ばかりを考えるようになっていた。


夏の近い、風の強いあの日、教室から走り出して行く彼の背中を見送った僕は、最後の後始末を終え、寝床にしていた教室のドアを閉め、住み慣れた廃墟の階段を――上っていた。
特に理由は無い。ただ何となく、そのままあっさりとは去り難かった、それだけだ。

勿論、そのただ何となくが僕にしては相当の問題行動だって事は分かっていたけど、気付かない振りで。

障り猫がほどいたロープが真横に流れ、ごうごうと風の音だけが耳を打った。
屋上から街並みを見渡していたら、あろうことかこのタイミングで一台の自転車が走ってくるのが見えて、笑ってしまった。

ああ、僕らには本当に、何がしかの縁があるのかもしれないね。ここでもう一度君の姿を見せてくるなんて、目に見えない誰かの粋な計らいのようじゃないか。

それを、今、切ってあげよう。

『阿良々木くん!』

阿良々木、暦くん。
白状するとね。
僕が何より好きだったのは、誰かの為に走る君の、その後姿だったんだよ。

そうして、僕は街を去った。最後に一番好きな光景を焼き付けて。


彼は怒るだろうか。僕を恨むだろうか。そして、忘れてくれるだろうか。
そんな女々しい事を暫く考えていたのを覚えている。自分の未練がましさに苦笑した事も。
彼のあの性格だ、10代の終りの日々を誰かの為に走り回って過ごすうちに、いっときの間違いみたいな感情のやり取りなど、多分忘れてくれる、忘れてくれたと思う。いや、若いってのはいい事だ。


――なら、この思いは。

何時まで経っても消え去ってくれない僕の恋情は、何処へ捨てたらいいだろう。

「・・・うん、そうしよう」

このまま歩けば、あの廃墟に辿り着くから、そうしよう。
これは賭けだ。とても安全な倍率の賭け。安全に負けて、安全に失恋するとしよう。

ひとつ。廃墟に阿良々木くんが居て、
ふたつ。僕を待っていて、
みっつ。僕を――まだ好きで。

三つ揃ったら、僕の勝ちだ。
あの子がそこまでの馬鹿だったなら、お伽噺みたいなその運命に、今度こそ乗ってやろう。





落書き帳の再会ネタの直前ということで。
忍野さんは本当に冗談みたいなつもりで廃墟に立ち寄ったのでしたーと。
モノ見りゃ踏ん切りも付くだろうと。

まだまだ阿良々木くんのしつこさもとい一途さを、甘く見ていたんですね。

Carrie Underwood/Ever Ever After

Storybook endings, fairy tales coming true
Deep down inside we want to believe they still do

本気でこの歌BGMにしてたらしいぜ・・・この管理人!
魔法にかけられてるのはお前の脳だって話ですよ!(恥ずかしいという感情はあるんですよ!?)


ふ、と目を開けた。

「あ、本当に起きた」

目の前には見慣れたぼろぼろの天井。そして視界の端にはこれまた見慣れたぼさぼさの金髪。
「忍野・・・? ああ、寝ちゃったのか、僕」
いつもの机の上に腰掛けて話し込むうちに、眠り込んでしまっていたらしい。ここの所夜更かしが続いていた為だろう。
体を起こして、まだ少しぼんやりした頭で周りを見回すと、辺りはすっかり暗くなっていた。

――やばい、今何時だ。
今日は二人にドーナツを差し入れたらすぐに帰るつもりで、火憐ちゃんと月火ちゃんにも遅くならないって言って――

「偶然かなあ。でもよく寝てたし」
焦って時計を確認する間、隣に座る忍野が何かブツブツ言っているので、不審に思って覗き込んで見る。と。
「阿良々木くんはベタだからなー」
何か、失礼なコメントと共に、ふいと顔を逸らされた。

「・・・何だよ、ベタって」
「いや別に。独り言だから絡んでこなくていいよ」
即答か。可愛くねえ。
「だったら聞こえるように言うんじゃ・・・あれ?」
何か、口の中が甘い。
唇に触れてみると、白い粒が指についてきた。
「? これ・・・」
「それの何がおかしいんだい阿良々木くん、今日はドーナツを差し入れてくれたじゃないか」
「ああそうか。って、いや、僕は夕飯入らなくなるから、食べてないけど」
「うるさいなあ、そんな説明台詞を呟いてる暇があったらさっさと帰れよ。妹ちゃん達にまた怒られるぜ」
顔を逸らしたまま、やけにぶっきらぼうにのたまう声。
何だこいつ、今日は・・・というか、今、急に僕の扱いが荒くなってないか。
「言われなくても帰るよ。何で機嫌悪いのか知らないけど、忍のドーナツ取るなよな」
些か気分を害した僕は、負けじとぶっきらぼうに言い放って荷物を掴み、教室のドアに向かった。

立て付けの悪いドアを開いた所で、
「・・・ん?」
ばっ、と振り返った。

忍野は、机に腰掛けて、未だ僕を見ようとしない。
傍らには、蓋の開いたドーナツ屋の箱。
中は見えないけれど、近くに紙ナプキンが広げられており、多分、食べかけの・・・
「・・・」
僕は無言で向き直り、外に出て、静かに静かに、ドアを閉めた。
そして、一つ息をついてから、――暗い廊下をまっしぐらに階段へ走った。

いやいやいやいや、無い無い無い無い!
そんなベタな展開、僕とあいつの間にあってたまるものか!

舌先に残る砂糖の味。ああくそ顔から火が出そうだ。
階段で何度か躓きながらも、僕はただひたすらに廃墟の外を目指し、その思考から逃れようと足掻くのだった。

*

「あー、転ばなきゃいいけど」
時折何かにぶつかりながら遠ざかる足音に、僕は溜息を吐いた。
はじめは普通に起こしてあげようと思ったのだけど、あんまり平和に眠っていたものだから。
出来心でやった。今は反省している。って所か。

口の端に付いた食べかすを指で拭って舐めてみれば、
「・・・甘」
あの子の唇と、同じ味がした。





ひいいい恥ずかしいいいいいい。

あと、舌を入れたらもう、おめざの意味から外れると思います!
というか、起きたのは舌を入れry

でもね、きっと、我に返って体勢を戻して、くらいのタイミングでry

「誰かを憎むことくらい、あるだろうさ」

『あ、』
『・・・な、何だよ』
『阿良々木くんが笑っている』
『? そりゃ、僕だって笑うよ』
『・・・』

「世話、かけるな」

『また笑った』
『笑っちゃ悪いのか! 僕は今、この行き場の無い照れくささと激闘中なんだが』

「いいよ」

『あ、僕もちょっと闘ってる・・・』

「(忍野、お前は、お前は本当に――)」

『わーわーわーわー! 聞くな聞くな! 下らない事しか考えてないぞ!!』
『妨害しないでくれるかな。折角の貴重な阿良々木くんデレを堪能してるんだから』
『デレって言うなああああ! ああほらエンディングだ! やったあ! 解決だ!』

『――「忍野、お前は、お前は本当に、悪魔なんかよりずっと、とんでもない奴だよな――」いやあ、照れるなー』

『やめてー! 正確に再現しないでー! 物真似しないでー!』
『でも勘違いするなよ。別に僕は、阿良々木くんが馬鹿な真似をして死んじゃってもしょうがないなーどうでもいいしーって、ぜーんぜん心配なんかしてなかったんだからね』
『何故ここでツンを発動するんだ、お前は・・・』
『・・・生意気を言うのはこの口かなー?』
『いでででで! ひっふぁるな、ふぁか!』
『あ、そしてここも、血塗れだけど微かに笑ってる』
『何なんださっきから!』

『何だじゃないだろう』
『え、ちょ――』

blog20100505.JPG

『ちゃんとこっち見て笑え』





阿良々木くんて、忍野に面と向かって笑いかけた事、無い。

という衝撃の事実。
あったら、すいません。

何だろう、今更、なんだろうか。それとも雑談の時は笑ってるんだろうか。
こ、このツンガキが・・・っ!(ギリギリギリギリ)

というような気持ちを込めて、なんちゃってオーディオコメンタリー風に。
いやあ・・・聞きたいですよねえ、忍野と暦バージョン!
するがモンキーなんて、後半、恥ずかしさの余り、二人して黙り込むんじゃないの?(笑)
もしくはヴァルハラコンビに倣って、超関係無い話。漫画とかアニメの。
「世話(略)」
「い(略)」
の辺りで声が大きくなったりすると、いいよね・・・!(プッフー)

してるので、下げますー。
よろしければ、続きからどうぞ!







この廃墟は、本当に静かだ。

住宅街から離れている事を差し引いても、この音の無さはちょっと異常だと思う。
忍野が張ったという、結界――そんな漫画か小説みたいなものがあるなんて、俄かには信じ難いものがあったけれど――が、少なからず影響しているのだろうが、静かすぎて、

「や・・・お、と・・・やだ・・・っ」

その指が触れる場所からの水音のようなものまでが、机の軋む音に混じって耳に届いて、しまって――。

「――じゃあ、我慢しないで声出せばいいんじゃない?」
耳元に、少し笑みを含んだような声が返った。

向き合って膝を跨ぐようにして首に縋り付いている格好だから、忍野の表情は見えない。
どうせニヤニヤしているんだろうと思うと腹が立つが、この腕を解いたら膝立ちの格好を維持出来ないし、何より自分の顔を見られるのも嫌だから、仕方ない。
そう、仕方ないから、こうしているん、だから、
「・・・ぅあっ!」
「集中、しなさい?」
一瞬意識を他所へ向けただけだというのに、中を指でかき回された。こいつは・・・っ!
「っ、だって、もう、何回・・・っ」

(何回、この体勢でいかされてると思ってんだ!)
という所までは、残念ながら声にならなかった。
「だって、ほら。まだ挿れるの無理だよ」
残念ながら。
「っ~~!」
2本入っている指を広げられて、息が詰まった。
ああそれは仰る通りかもしれないけどな! 残念と言いつつ、ちょっと楽しそうなのは何でだ!
やり場の無い悔しさを、せめて首に回した腕に込めてやる。
「ちょ、阿良々木くん締まる、締まるって」
忍野の声は、焦った振りをしてもあくまで余裕げで、分かっていたけど更に悔しくさせられてしまった。
慣らすから、という理由で、もうだいぶ長い事、こうして後ろを弄られているように思う。
僕の反応を探るのが異様に上手い長い指に、後ろだけで、何度も何度も。
・・・何度も達してしまう位、気持ちが良いのは確かだけれど、いい加減こちらの羞恥も限界なのだ。
僕の出したものが飛び散った互いの腹だとか、それが後ろまで垂れて卑猥な音を立てている事だとか。

――忍野が挿れてくれさえすれば、二人して夢中になれるのに。
早く欲しいのも本当だし、それに、結局忍野に我慢させているのが、同じ男としてはちょっと、かなり、申し訳ない気も、するし。

「おしの、な、もう、いいから・・・だいじょぶ、だから・・・」
だから僕は、息も絶え絶えにそう告げる。
だから、もう挿れていいから、と。
「駄目」
「だ、って、お前だって」
「怪我、しちゃうよ?」
宥めるような優しい声にも、頷く事は出来なくて。
だって忍野、そんな風に気遣われるのは、嬉しいけど嬉しくないんだ。
いつもいつも護られて、先回りして気遣われて。
まるで一方通行で。
「いい、ってば!」
僕がお前に出来る事や、譲れる事が、何も無いみたいで。

「どうせ、僕は怪我したってすぐに治るんだから!」
「――」
途切れる前に言い切ろうと一気に口に出したら、忍野の動きが止まった。
「だから、そんなにしてくれなくても――」
「阿良々木くん」
互いの胸の間に、冷えた空気が滑り込んできた。
忍野が、僕の腰を抱いて支えていた腕を緩めて体を離し、目を合わせてきたのだ。そして、
「こら」
こつん、と頭を小突かれた。
「え・・・――」
反射的に、何だよと続けようとした声を、呑んだ。
口調や行動とは裏腹に、忍野がえらく怖い目で僕を睨んでいたからだ。
「もう一遍、言ってご覧」
「え、忍野・・・?」
僕は忍野の肩に手をかけたまま、逸らす事も出来ずにその目を見返す。
そして、静かに冷えた、何処か悲しげな眼差しに、いつか出会ったばかりの頃を思い出した。

『こら』

あの時もそう言って、忍野は僕に同じ事をしたのだ。
僕が、忍の――いや、あの頃はまだ、キスショットの――誠実を、信じなかった時に。
忍野が本当に本気で、浅はかな僕を嗜めようとした時に。

「ああ、全く・・・」
軽く息を乱したまま何も言えないでいる僕に、忍野が大きく溜息を吐いた。
「・・・どうせ治るから、痛い思いをしてもいいって思ってるのかい?」
「そ、れは」
そう、なんだけど。
僕を覗き込む忍野の目には、そう答えさせない無言の圧力があった。
「そんな風に僕が思うと、思うのかい?」
「それは、違う」
即答。
そんな事を忍野が思う訳が無い。
軽薄そうに無責任そうに振舞うこの男が、こういう時にどれ程誠実になるのか、僕は嫌と言う程知っている。
そう、思う訳が無いのだ。

「・・・ごめん」
俯いて、忍野の肩に額をつけた。
全然痛くなかった筈なのに、忍野に小突かれた所が、ずきずき痛むようだった。
「ほんっとに、阿良々木くんは馬鹿だなあ」
優しい声だった。
「・・・うん」
本当に、馬鹿だと思った。声が少し掠れくらい、馬鹿だと思った。
「そうだよー」
忍野の大きな手の平が、背中を撫でてくれる。
体を少し離して促されて、ゆっくりと顔を上げれば、打って変わって穏やかな目に行き会った。
「また、好きだって何度も言わないと駄目?」
僕は笑って、黙って首を振る。
「忍野。――好きだ」
お前のそういう優しい所が。
本当に、胸が痛む程。
「うん」
それから?
と、今度はいつものニヤニヤ笑いに切り替えて聞いてくるから、
「・・・やさしくして」
多分、お望み通りの言葉を。

「――仰せのままに」
ニヤリと笑う顔が格好いいだなんて、僕も大概だと思うけれど。
「じゃあほら、掴まって腰上げてー」
「ラジオ体操っぽいな・・・」
「次は3本ね」
「ひあっ・・・!」
大概だと、思うけれど!

「阿良々木くん、分かってると思うけど――」
「「容赦」」
しないからね、と、しないんだろ、が重なった。
はっはー、分かって来たじゃんと楽しげな忍野。

こうして結局ループしていく。想いも、痛みも快感も。
僕がしてやれる事が無いとしても、お前が僕を欲しがってくれると言うなら、全部、持って行ってくれ。
流石にそれは口に出せないまま、目の前の唇に自分のを押し当てた。





ついったで、「阿良々木くんはえむだしすぐに傷も治るから便利だね!」ってな話をしていまして(い、いつもそんな話をしているわけでは!)。
でも、忍野はそういう風に思わないよね、阿良々木くんがそんな事(えむは言わないよ! つーか奴は己のマゾ性に無自覚)言ったら怒るよね、と素敵な流れになったので、許可を頂いてメモ書きしてみました。
ありがとうKさん! 私のネタの泉の精・・・!
ついったでお仲間とお喋りしてると、なーんかネタが湧くんですよね、素敵ですよね!(内容はともかく)

で。
阿良々木くんを怒る時、傷物語でしたように「こら」だったら更に萌えって話なんすよ!(机をバンバン)
何あれ・・・男子高校生にするアクションか・・・?
い、いや、きっと私の目は腐って曇っているから、自然な動作も不自然に写ってしまうのかな!
うん、きっと普通ですよね、30代男性が、高校生( 男 子 )を嗜めるときに、

  「こら」
  こつん、と。
  軽く頭を小突かれた。(引用)

うん、ふつ・・・う・・・か・・・な・・・?

・・・あ、今、恐ろしい事に思い当たったんですけどー!(テンション高えな!)
今まで私、軽く握った拳で、こつんだと思っていましたが・・・拳とは書いてないな!

・・・指、だったら・・・どうする・・・?(ゴクリ)

そんな馬鹿な!
それじゃまるで、馬鹿ップルじゃないか! まさか!



ちなみにこの後、

「何もしてやれないなんてとんでもないよ、阿良々木くん」
「嫌な予感がする・・・」
「色々あるだろう、口でするとか上に乗って自分で動くとか無茶な体位に挑戦する事に喜んで同意とか」
「やっぱりな! やっぱり台無しだったな!」
分かってたよ馬鹿! 忍野のバーカ!

みたいな流れになるんですよね、きっと。


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